ポイントは、ISO14001等を「経営改善のツール」として使いこなす
ISO14001という環境マネジメントシステムの国際規格が発効したのは、1996年ですので、今年で16年になります。
日本において、環境マネジメントシステムに関しては、ISO14001に基づく認証登録件数が25000件くらいと推定されていて、最も件数が多いです。次いで、環境省規格・エコアクション21の認証登録件数が7000件強、エコステージの認証登録件数は1000件くらいでしょう。
最近、「環境マネジメントシステムの認証を取得したけれど、企業経営にメリットがない」という理由で、認証を返上される動きも出てきており、私にとっては頭が痛いところです。
なぜ、認証取得しても、企業経営にメリットが出ないのでしょうか?
いろいろ原因があると思いますが、最大の原因は、「ISO14001等の規格は”企業経営改善のツール”にすぎないのに、ツールに合わせようとして”企業が振り回されている”こと」と思っています。
私は、経済産業省登録・経営コンサルタントの国家資格である「中小企業診断士」の資格を取得してから、環境マネジメントシステムの認証業務に関する審査・コンサルティングの世界に入りました。
私が審査やコンサルティングで最も重点を置いている視点は、「環境マネジメントシステムが、企業経営に役立つにはどのように審査・コンサルティングするべきか」という視点です。
表現を変えると、「企業経営に役立つように、ISO14001等のツールをどのように使うと有効か」という点を重視しています。
審査に行くと、やたらと”沢山の文書や記録”を作っている企業・組織に遭遇します。いろんな文書・記録で”がんじがらめ”になっている状態です。過去の審査員の指摘で、不幸にも文書・記録の山になってしまったケースもあります。また、認証取得だけを目指したコンサルタントが、沢山の文書や記録を作ってしまった不幸なケースもあります。文書・記録の山にうずもれているような企業・組織は、たいがい「環境マネジメントシステム認証が役に立たない」と愚痴をこぼしている場合が多いです。
私がコンサルティングをするときは、文書は必要最低限しか作成しません。最近コンサルティングが終了した企業では、私が作成した文書は5つだけです。他は、「既存の文書や記録を改訂する」ことによってISO14001の要求事項を全てカバーしました。幸い、評判の高い審査機関だったので、無事に是正処置要求ゼロで認証取得されました。
審査員の方から「新たな文書作成を極力抑えてあるのに、ISO14001の要求事項は全てカバーされています。企業経営活動にリンクする、良い環境マネジメントシステムです。良いコンサルタントが就かれたのですね。」とお褒めの言葉も頂きました。
私は、企業経営に役立つ環境マネジメントシステムは、本業とリンクしていないと機能しない、と強く思っています。
「ISO14001等の規格要求事項に業務を合わせるのではなく、企業経営の中に規格要求事項を取り込む」という観点で環境マネジメントシステムを構築し、運用していくことが最大の重要ポイントだと思います。
「ISO14001等の認証取得だけが目的」になってしまうと、規格要求事項に振り回された「動きの悪い環境マネジメントシステム」になりかねません。もちろん、ヨーロッパ等と取引しようと思ったら、ISO14001の認証取得が取引条件になることが多いため、認証を取得するというケースが多いのは確かです。
そのような場合でも、「あくまでもISO14001等は、経営改善のツールにすぎない」という視点を忘れないでいただきたいと感じています。
少々抽象的な記事になりましたので、今後、もっと具体的な話を書きたいと思います。
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